新規事業を任されたけれど、既存業務が優先され、調査の依頼に返事をする時間も取れない。この状態は、ツールや外注先を増やすだけでは解消しません。
専任者を置かなくても進められる場合はあります。ただし、社内で判断する人、現場の協力、資料の提供と結果確認に使う時間は必要です。 「専任なし」と「社内の担い手なし」は分けて考えましょう。
この記事では、兼務×ツール、伴走、BPOの三つを、任せる仕事と社内に残す仕事で比べます。いま不足しているのが実務の時間か、方法か、判断体制かを分け、現実的な依頼範囲を決められます。
最初にすること: 次に決めたいことと、その前に止まっている仕事を一つ書く。作業担当、資料を出す人、判断する人を確認する。
今週の進め方: 各担当が実際に使える時間を確認し、内製する範囲と外へ頼む範囲を仮決めする。候補先には同じ条件を伝え、社内協力・成果物・費用を確認する。判断役が決まらない場合は、発注より先に社内の合意を整えます。
人材不足の数字は、自社に必要な体制をそのまま決めるものではない
パーソル総合研究所の調査では、従業員300名以上の企業で新規事業開発を専任・兼務する担当者1,800人の38.9%が、人材確保の難しさを組織マネジメント上の課題として挙げています。実査は2021年10月28日〜11月4日、公表は2022年です。原典PDFの調査概要2頁・課題27頁で対象と設問を確認できます。
これは対象担当者の課題認識で、日本の全企業の人材不足率ではありません。専任を置ける会社の割合や、「外注すれば解決する」という効果を示す数字でもありません。
自社では、止まっている仕事を分けて考えます。作業時間だけが足りないなら実務の切り出しが候補です。何を確かめるかが決まらないなら、調査設計を一緒に行う支援が合うことがあります。事業の目的や投資判断が決まらない場合は、社内の責任者と先に相談する必要があります。

兼務×ツール・伴走・BPOは、社内に残す仕事で比較する
次の三つは体制を考えるための整理です。同じ呼び名でも、提供者や契約により実務の範囲は異なります。
体制 | 合いやすい条件・外へ任せる仕事 | 社内に必要な判断と時間・代償 |
|---|---|---|
兼務×ツール | 社内に対象業務と調査方法の知識があり、検索・整理・資料作成などを補助したい | 担当者が入力、原資料の確認、出力の修正を行う時間。ツール導入だけでは顧客接点や判断役は補えない |
伴走 | 問い・方法を一緒に決め、次回は社内でも進めたい。設計や実施を共同で行う | 共同確認と実践へ参加する時間、現場や顧客との調整。教わる側の参加が取れなければ、知見が残りにくい |
BPO | 対象と受け取り条件を合意でき、募集・調査・集計などの工程を任せたい | 情報の提供、例外への返答、成果物の確認、次の投資判断。委託費に加え、依頼・確認・引継ぎの負担が残る |
兼務者の稼働が一定割合あれば回る、短期契約なら走り切れる、といった共通の基準は置けません。顧客への連絡許可や技術判断など、外部の人だけでは進められない仕事もあります。
英国政府のSourcing Playbookも、内製・委託・組み合わせを、費用、能力、リスクなどで比較しています。政府調達向けの指針を、事業開発でも役割と負担を分けて考える参考にしています。
依頼形態や見積もりの比べ方は、新規事業支援サービスの選び方で確認できます。名称より、今回の始点・終点・成果物をそろえることが先です。
外注する前に、社内の三つの役割と返答する場を決める
「外部が企画を作り、社内は選ぶだけ」では、候補の対象や前提がずれていても途中で直せません。少なくとも次の役割を確認しましょう。同じ人が兼ねる場合も、必要な仕事と稼働は省略しません。
- 進行担当: 依頼範囲と日程を整え、質問や例外を判断役へつなぐ。
- 現場・情報の協力者: 業務の実態、利用できる資料、顧客への連絡可否を確認する。
- 判断役: 対象・費用・方針変更を承認し、継続・修正・保留を決める。
たとえば、兼務の企画担当が「保全担当者の記録検索を調べたいが、募集と記録整理の時間がない」と考える場面です(仮例)。募集・日程調整・了承の範囲での記録整理は外部へ依頼する候補になります。一方、対象経験の妥当性は現場責任者、顧客への連絡は営業責任者、次の投資は事業責任者が確認します。
全員が全作業へ同席する必要はありません。対象条件を決める場、途中で記録を確認する場、結果を判断する場について、日程と担当の時間を確保します。初回の記録で対象がずれていたら、人数を埋める前に条件を修正します。返答できる人がいなければ、委託範囲を広げるより、先に担当と予定を整える必要があります。
成果物と社内負担を見て、続ける・直す・保留する
試行では「企画が何件届いたか」だけで判断しません。次の条件を、始める前に合意しておきましょう。
- 続ける候補: 依頼した条件で調査・作業が行われ、原資料や判断の根拠へ戻れる。社内の確認負担も続けられ、次の判断に使える。
- 範囲や進め方を直す: 対象条件が伝わらない、確認待ちが多い、出力を直す負担が重い。どこで止まるかを特定し、担当・受け取り条件・委託範囲を見直す。
- 保留する: 必要な資料や連絡許可、判断役の時間を確保できない。条件が整うまでは、調査できたふりをして企画を選ばない。
企画に不利な材料が得られた場合も、依頼した仕事が適切なら、その調査が失敗とは限りません。委託の品質と事業案の見込みは分けて評価します。
個人依存を減らすには、型と評価だけでなく使う時間を確保する
納品物には結論だけでなく、対象条件、確認した記録、反例と未確認、判断理由、次の担当を含めます。データの利用範囲や終了時の引継ぎも依頼時に確認しましょう。記録があっても閲覧できない、次の担当がいない状態では引き継げません。
兼務者の上司とは、新規事業で担う仕事と時間、既存業務の調整、評価する成果を合わせます。新しい仕事を上乗せするだけでなく、何を減らすかも相談することが必要です。ツールや外部支援を選ぶ前に、まず一つの仕事について、任せる人・確認する人・判断する人が予定を持てるかを確かめましょう。