生成AIを商品開発に活かすなら、まず業務ごとの利用状況と効果を整理し、次の判断が止まっている工程から試す対象を選びます。議事録やメールで使えていても、新商品・新サービスの開発で何が変わったかは、別に確かめる必要があります。
担当者が上司へ提案するときも、経営者や個人事業主が次の取り組みを決めるときも、出発点は同じです。どの作業をAIに任せ、何を人が確認し、どんな結果なら続ける・変える・止めるのか。調査データを自社の目標値にする前に、業務の単位まで具体化しましょう。
活用方針と利用実態 — 数字の対象をそろえて読む
総務省「令和8年版 情報通信白書」が示す2025年度企業向け調査では、日本で生成AIを「積極的に活用する方針」「領域を限定して利用する方針」とした割合の合計は68.9%でした。前年度の2024年度調査では49.7%で、活用する方針を持つ企業の割合は上昇しています。
自社でも、利用を認めていることと、実際に業務で使っていることを分けて記録します。さらに、試しに使った段階なのか、日々の仕事に組み込んでいるのかを添えると、次に確認する対象が明確になります。
業務によって違う、生成AIの使われ方と効果実感
同じ調査の日本の業務類型別の活用では、「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続きます。効果を実感する割合も「議事録・メール作成補助」が約7割で、ほかの類型より顕著に高いとされています。
これらは回答企業の利用状況や効果実感を示すもので、作業時間の削減率や商品開発の成功率ではありません。利用する割合と効果を実感する割合が近くても、同じ企業が同じ結果を得たと読み替えることはできません。
調査で分かることと、理由の見立てを分ける
国際比較では、日本は全体的に「未導入」「わからない」の割合が高く、米国・中国は各業務で活用率が高い傾向です。特に「研究・商品開発」で効果を実感する割合が高いとされています。ただし、この比較だけで、日本で効果実感が低い理由や、どの使い方が成果を生んだかまでは説明できません。
ここから考えられるのは、成果物の形が決まり、品質を確認しやすい業務ほど、生成AIによる変化を捉えやすいのではないかということです。議事録なら元の記録と照合できます。一方、商品開発では、企画案が整っていても、利用者の課題を解決できるか、導入担当者や経営層が購入を決めるかは、相手に確かめる必要があります。
商品開発では、AIの出力そのものより、その後に誰へ何を確かめ、どの判断まで進めたかを見る必要があります。自社で見るべきなのは、AIの出力ができた後、誰のどんな判断につながったかです。
商品開発を工程に分け、AIに任せる作業を決める
ここでは商品開発を、「調べる・形にする・顧客に見せる・反応を整理する」の4つに分けます。実証済みの正解ではなく、AIを使う範囲と、人が確認する範囲を整理するための仮説です。
- 調べる — 手元の資料から論点や比較項目を整理する。人は出典と内容を確かめ、判断に足りない情報を特定する。
- 形にする — 企画の説明文や試作品のたたき台を作る。人は確かめたい仮説に必要な範囲を選び、相手に示せる内容か確認する。
- 顧客に見せる — 説明の順番や質問案の作成を補助させる。人が利用者や導入担当者に提示し、実際の反応や行動を確かめる。
- 反応を整理する — 聞き取りや利用の記録を要約・分類する。人は元の記録に戻り、発言と解釈を分けて、次の検証を決める。
工程ごとに、使える材料、欲しい出力、確認する人を組にします。調べたい問いが曖昧なら問いを絞る。元の記録がなければ記録を集める。出力を判断できる人がいなければ確認役を決める。足りない条件が見えたら、それを整えることが次の行動です。
作業の速さと、検証の進み方を別々に記録する
作業面では、入力の準備から出力の確認・修正までを含め、現在の方法と比べます。生成が速くても修正が増えたなら、その負担を残します。検証面では、利用者に見せられたか、未確認だった前提について何が分かったか、企画を変える判断に進めたかを記録します。
AIが生成した顧客像や予想した反応は、実際の利用者から得た証拠にはなりません。資料を作れたこと、相手に確かめられたこと、購入の判断まで進んだことは、それぞれ別の結果として扱いましょう。
棚卸しから、次に試す工程と判断条件を選ぶ
まず、議事録・メール作成補助、営業・販売、社内ヘルプデスク、研究・商品開発を並べます。該当する業務について、次の項目を書き添えてください。商品開発の欄は、前節の工程に分けると、具体的な作業まで絞れます。
- 使っているか — 未利用・試行中・日常利用のどの状態か。誰が何に使っているかも書く。
- 効果を実感しているか — 何が楽になった、何の判断が進んだと感じるか。実感がない場合も、そのまま残す。
- 効果を測れているか — 時間、修正の手間、検証の記録など、比較できる根拠はあるか。なければ「未計測」と書く。
これらは排他的な分類ではありません。使っていて効果を感じていても、測れていないことはあります。効果実感がある業務は根拠を確認し、未計測の業務は比較方法を決めます。未利用の業務は、材料と確認役がそろうかを先に点検してください。
次の候補は、判断に必要で、確かめられる工程から
次に試す対象は、判断を止めている作業のうち、材料を用意でき、出力を人が確認でき、試した後の違いを記録できるものから選びます。新しい案を増やしても判断が進まないなら、不足情報の整理や、すでに得た反応の整理を候補にできます。
- 何を決めたいか — 今回の結果で見直す判断を明確にする。
- 何を試し、何と比べるか — 担当者、材料、確認・修正を含む作業範囲、比較する記録を決める。
- 結果をどう判断するか — 続ける・変える・止める条件を先に決める。
上司や経営層への説明には、全国の活用率に加え、自社で止まっている工程、試す作業、確認方法、結果を判断する時期を添えましょう。個人で進める場合も同じ項目を残せます。比較の記録がない場合は、効果がないと結論づけず、測り方を決めてから再度確かめます。
試す工程や効果の確かめ方を整理しきれない場合は、PROTOCOREへの相談も選択肢です。現在使っている業務と、商品開発で判断が止まっている箇所を整理しておくと、次に確かめることを相談しやすくなります。