「新規事業をやるので、優秀なやつを充てました」— この判断が、必ずしも良い結果につながらないことは、現場を見てきた方なら心当たりがあるはずです。既存事業のエースは正解のある業務を速く正確に回す能力で評価されてきた人材です。新規事業で必要なのは、正解がない中で仮説を立てて検証を回す、まったく別の筋肉です。
新規事業の担当者調査では、事業を成功と評価できたのは30.6%(パーソル総合研究所・2022・担当者n=1,800)。同調査は、担当者個人の資質や環境が成果を大きく左右することを示しています。
人選の3基準 — 熱量・学習・巻き込み
私たちが人選で見るのは3点です。①テーマへの熱量(そのテーマに個人的な原体験や関心があるか。任命ではなく「やりたい人」か)、②学習の速さ(知らない領域に自分で飛び込み、専門家に聞きに行けるか)、③巻き込み力(社内の協力者と社外の顧客を、肩書きなしで動かせるか)。既存業務での成績は、この3つとあまり相関しません。
「片手間」は制度の問題 — 個人の頑張りで解決させない
担当者を決めても、既存業務と兼務のままでは検証は進みません。会議の合間の新規事業は、必ず既存業務に負けます。専任を出せない場合の現実的な体制設計は専任ゼロでも新規事業を進める体制のつくり方に詳しくまとめていますが、原則はひとつ — 週の中で新規事業に使う時間をカレンダー上で固定し、上司がそれを守らせることです。
未経験者の立ち上げは「順番」で決まる
新規事業が初めての担当者に、いきなり事業計画書を書かせてはいけません。最初の1ヶ月でやるべきは顧客に会うことです。10件のインタビューを経験した担当者は、机上の企画がなぜ通用しないかを体で理解します。計画書はその後で構いません。進め方の全体地図は新規事業の進め方 完全ガイドをご覧ください。
評価制度を先に直す
最後に見落とされがちなのが評価です。既存事業と同じ目標達成率で評価される限り、優秀な人ほど新規事業を避けます。検証期の担当者は学習速度と検証の質で評価する — この一文を人事と合意できるかが、実は人選そのものより効きます。
出典:パーソル総合研究所「企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査」(2022・担当者n=1,800)。