新規事業の情報は世の中に溢れていますが、「結局、何をどの順番でやればいいのか」を通しで示したものは意外に少ないものです。この記事では、私たちが支援の現場で使っている9工程の全体地図を、各工程の目的・成果物・典型的なつまずきとともに解説します。
工程1:想い・テーマ — 「誰の熱量で進めるか」を決める
最初の成果物はテーマリストではなく、「やりたい人」がいるテーマです。トップダウンで割り当てられた企画は検証の苦しい局面で止まります。担当者個人の関心・原体験と会社の方向性が重なる場所を探すこと(私たちはこれを“私事化”と呼びます)が、後工程すべての推進力になります。
工程2:観察・分析 — 市場より先に「自社アセット」を見る
市場レポートから入ると企画は一般論になります。先に自社の技術・顧客基盤・過去の知見を棚卸しし、それを使って誰の何を解決できるかという順で考える — この違いが「なぜ自社がやるのか(Why us)」の有無を分けます。詳しい手順は自社アセット起点の企画法で解説しています。
工程3:事業仮説 — 検証できる形に言語化する
「誰が・どんな状況で・何に困っていて・いくら払うか」を1枚で書きます。ここでのコツは正しさよりも反証可能性。曖昧な仮説は検証できず、検証できない仮説は前に進みません。生成AIを使えば、仮説の構造化からペルソナ・体験設計の下書きまでは30分で到達できる時代です。
工程4:戦略・体験設計 — 提供価値を体験に落とす
誰にどんな体験を届け、どこで対価をいただくか。ビジネスモデルと顧客体験(UX)をセットで設計します。この段階の成果物は事業計画書ではなく、顧客に見せて反応を取れる具体物(コンセプトシート・体験の流れ・ラフなプロトタイプ)です。
工程5:検証 — 「続ける・変える・やめる」の基準を先に決める
インタビューとプロトタイプで、需要と支払い意思を確かめます。重要なのは検証の前に判断基準を数字で合意しておくこと。基準がない検証は、何件聞いても解釈合戦で終わります。設計方法はPoC止まりを防ぐ検証設計と撤退基準の決め方に詳しくまとめています。インタビューの実務は顧客インタビューのやり方へ。
工程6:役員会 — 「検証済み」を示して投資判断を取る
役員会が見ているのは面白さではなく投資判断に耐える根拠です。Why us・数字の出典・確度ラベル・撤退基準の4点が揃った企画書は通過率が大きく変わります。詳細は役員会を通る事業企画書の条件へ。
工程7:MVP・β開発 — 作りすぎない
検証済みの価値だけを最小構成で形にします。この段階の敵は「せっかく作るなら」という機能追加。開発は自社で抱え込まず、AI開発パートナーと組む選択肢も含めて、検証速度を最優先に体制を設計します。
工程8:本開発 — 事業として立つ構造をつくる
β版の学びを反映し、収益構造・運用体制・品質を事業水準に引き上げます。ここで初めてまとまった投資が正当化されます — 逆に言えば、工程5〜6を飛ばしてここに来ると、根拠のない大型投資になります。
工程9:グロース・改善 — 「売る・回す・判断する・育てる」の仕組み化
立ち上げ後は、集客と販売(売る)、業務と生産性(回す)、データと意思決定(判断する)、顧客維持(育てる)の4つの力を仕組みにしていくフェーズです。生成AIを売る仕組みに組み込む方法、回す力の作り方、データ一元化入門で各論を解説しています。
全工程に共通する3原則
- 順番を飛ばさない — 特に検証(工程5)を飛ばした企画は、後の工程すべてが砂上になります
- 各工程の成果物を文書で残す — 担当者が変わっても再現できる形が、組織の資産になります
- 期限を切る — 各工程に上限期間を置く。生成AIの活用で、かつて数ヶ月かかった工程1〜3は今や数日〜数週間に圧縮できます
自社がいまどの工程で止まっているかは、無料のWeb診断(5分)で一般データと比較しながら特定できます。全体を1日で走り切る体験としては、1Dayワークショップ「One Day.」も提供しています。