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新規事業のアイデアを自社アセットから考える|技術を「誰の、どの仕事」に結び付ける

公開 2026-11-03方法論読了目安 5分
監修
#新規事業#アイデア出し

「うちの技術で、何か新しい事業を考えて」。そう言われて市場を調べても、出てくるのは他社と似たサービスばかり。反対に、技術の特徴を並べても、誰が買うのかが見えてこない。困るのは、この二つがつながらないときです。

自社アセットから考えるときは、「持っているもの」から「相手の仕事をどう変えられるか」へ言い換えましょう。 ただし、使える技術があることと、買う理由があることは別です。この記事では、資産の棚卸しから用途候補を選び、顧客に何を確かめるかまでを、一つの記入例でつなぎます。

  • まずは:製品資料・試験結果・過去の相談記録から、使えそうなアセットを一つ選ぶ。「できること」と「まだ確かめていない条件」を分けて書く。

  • 今週進めるなら:そのアセットを使う仕事の候補を並べ、一つは現場の作業、もう一つは技術の適用条件を確認する。相手が見つからなければ、業界経験者に仕事の流れと担当部署を聞くところまでで構わない。用途の採用を1週間で決め切る必要はない。

自社アセットを棚卸しする|技術・顧客接点・仕事の知識

アセットには、製品や特許だけでなく、現場を知る人や、協力を相談できる接点も含まれます。 ただし、社内に存在するだけで新規事業へ使えるとは限りません。

探すもの

見る資料・聞く相手

一緒に確かめる条件

技術・製品・設備

技術資料、試験結果、開発担当

何を、どんな条件でできるか。社外に出せる情報や利用権はどこまでか

顧客・販売接点

過去の相談記録、営業担当

誰のどんな仕事を知っているか。調査への協力を相談できるか

業務ノウハウ・データ

作業手順、改善記録、現場やデータの管理者

別の現場でも使える知識か。データの利用目的・権限・品質は合うか

Effectuationの「Bird in Hand」は、持っている知識・能力・人とのつながりから、取り得る行動を考える方法です。市場を無視する手法でも、手持ちの資産を必ず事業化するルールでもありません。

最初から全社の資産を網羅しようとせず、担当者が説明でき、確かめる相手に接点を作れそうな一つから始めましょう。使う権利や協力者を確保できない場合は、その条件の確認を先に置きます。

技術の特徴を、顧客の作業に置き換える

「画像認識が得意」だけでは、顧客の使い道は決まりません。何を写し、その後に何をする仕事なのかまで具体化しましょう。

説明用に、写真から印字された番号を読み取る部品を持つ会社を考えます。確認できているのは屋内の読み取りで、暗い場所や曲面の文字はまだ試していない、という設定です。

用途の候補は、たとえば次のように変わります。

用途候補

相手の仕事として考えること

候補を残す前に知りたいこと

請求書の入力

経理担当が書類の数字を会計システムへ転記する

今使っている読み取りや電子データで足りない場面はあるか

設備点検の記録

点検担当が設備番号を台帳へ転記する

どんな場所・角度で番号を読み、誤読を誰が確認するか

倉庫の入出庫記録

倉庫担当が品物を識別して記録する

既存のバーコード等では扱えない場面があるか

ここでは、三つとも需要は未確認です。「読み取れるものがある」からではなく、既存のやり方では困る仕事があり、自社の技術を使える条件もそろうかで候補を絞ります。

たとえば設備点検なら、次の一文まで書けます。

用途仮説の記入例
設備点検担当が、現場で撮った設備番号を台帳へ転記する作業を対象にする。読み取り候補を表示し、人が照合して確定する方法を試したい。まず、転記が必要になる場面と、読み取り・照合を含めても負担を減らせるかを確かめる。

この段階で自動入力まで作る必要はありません。写真と台帳を使った試し方でも、番号を読めるか、照合が重すぎないかは調べられます。写真の利用許可や持ち出せる範囲は、現場の管理者に確認しましょう。

用途が広い段階と、用途を確かめる段階で、聞く相手を変える

用途がまだ決まっていなければ、その業界の仕事・要求条件を知る人に、候補の抜けや実施できない条件を聞きましょう。 用途が具体化したら、実際の作業者や導入判断に関わる人へ進みます。

ユニチカの公開事例では、複数分野の有識者から課題・要求事項を集めて製品コンセプトを作る段階と、その仮説をインタビューで確かめる段階を使い分けています。既存製品の用途を広く募る取り組みも別に紹介されています。

設備点検の例なら、最初の確認を次のように分けます。

  • 業界経験者へ:設備番号を転記する仕事は、どの部署が、どんな場面で行うのか。写真を使えない現場や、既存の識別方法はあるか。
  • 実際の点検担当へ:最近の一件を、可能な範囲で記録と一緒にたどらせてもらう。転記・確認・修正がどこで起きるのかを見る。
  • 開発担当へ:許可された画像の条件で読み取れるか。読めない場合に人へ戻せるか。
  • 導入判断に関わる人へ:仕事の変え方、接続・管理・費用について、何を満たせば試行を認められるか。

同じ相手に全部を聞けるとは限りません。また、有識者の見立てや「便利そう」という感想だけで、現場で使える・購入されるとは決められません。最近の作業をどう聞くか迷ったら、顧客インタビューの質問の言い換え例も参考にできます。

アイデア候補を絞る|残す・外す・保留する条件

最初の候補選びは、事業の採用決定とは分けましょう。 次は、確認できた条件に応じて候補を選ぶ、説明用の判断例です。条件自体も仮定です。

候補と条件の設定

今回の判断・次の確認

設備番号の転記:転記作業が残り、記録と許可済み画像を見られる

試行候補に残す。暗所で読めるか、照合込みで負担を減らせるかを確認する

倉庫の入出庫:対象現場では既存のバーコードで必要な記録を完了できる

今回の候補から外す。技術を使うこと自体を目的にしない。別の現場では条件から調べ直す

暗所での読み取りが必須なのに試験できないなら、設備点検の案も、実施条件を整えるまで保留になります。

確認後も、結果に応じて選び方を変えます。

  • 転記で困っておらず、既存の方法で足りているなら、別の用途を探す。
  • 作業上の負担はあるが読み取り条件が合わなければ、技術の改善を検討するか、別の解き方を比べる。
  • 読み取りはできても照合・修正を含む負担が増えるなら、そのまま導入せず、対象や方法を見直す。
  • 作業と技術の条件が合っても、導入・購入の条件が未確認なら、判断に関わる人へ確認する。

確認結果に応じて、用途候補をどう扱うかの分岐。「いいえ」の段階で別用途の探索・技術改善・方法の見直し・判断者への確認に切り替える(設備点検の説明用の例)。

「なぜ自社がやるのか」は、アセット名を添えるだけでは説明できません。相手のどの仕事に役立ち、既存の方法と何が違い、自社がどの条件を引き受けられるのかが分かると、企画の理由になります。

まずは、選んだアセットについて「できること/使う仕事/まだ分からない条件」を一行ずつ残しましょう。全部を埋めるより、次に会う相手と、確かめる問いが具体的になっていれば、企画を一歩進められます。

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園田 励

Supervisor

園田 励REI SONODA

PROTOCORE 代表取締役 | Founder / Business Producer

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