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新規事業の予算の取り方 — 一括投資をやめて「段階投資」にする

公開 2026-09-06方法論読了目安 7分
#予算#意思決定#事業企画#投資判断

「初年度予算5,000万円を確保しました」— 一見恵まれたスタートに見えて、これは新規事業にとって危険な状態です。大きな予算は使い切る力学を生みます。検証で雲行きが怪しくなっても、予算と体制がある以上は止まれない。かくして「やめられない事業」が生まれます。

大企業780社の調査では、新規事業テーマのうち立ち上げに至るのは45%、単年黒字化は17%、中核事業化は4%(アビームコンサルティング・2018)。大半のテーマは途中で形を変えるか止まります。予算は「全テーマが成功する前提」で組んではいけません。

段階投資 — 検証の通過ごとに次の予算を解錠する

代替案は、ベンチャー投資と同じ考え方の段階投資です。①課題検証(〜100万円規模:インタビュー・リサーチ)、②価値検証(〜500万円規模:プロトタイプ・有料トライアル)、③事業検証(〜数千万円規模:MVP・初期販売)— 各段階に「次に進む条件」を数字で決め、条件を満たしたときだけ次の予算が解錠される設計です。判断基準の作り方は撤退基準の決め方と対になります。

経営層への通し方 — 「総額の約束」ではなく「ルールの約束」

段階投資の稟議は、総額の承認ではなくルールの承認として通します。「3年で1億円ください」ではなく「①に300万円ください。通過条件はこの3つ。満たしたら②の稟議を持ってきます」。経営層にとっては損失の上限が明確になり、担当者にとっては小さく速く始められる。双方にとって合理的な取引です。

刻むのは金額だけではない — 体制も刻む

予算は「一括で取る」のではなく「条件で解錠する」 検証の進捗に、金額と体制の両方を連動させる 従来型:一括投資 初年度予算を一括で確保 5,000万円 一見恵まれたスタートに見えるが 使い切る力学 予算と体制がある以上、 雲行きが怪しくなっても止まれない やめられない事業 大半のテーマは途中で形を変えるか止まる 段階投資:通過した分だけ次が解錠される 課題検証 インタビュー・リサーチ / 体制:担当1人+協力者 〜100万円規模 「次に進む条件」を数字で決め、満たしたときだけ次の予算が解錠 価値検証 プロトタイプ・有料トライアル / 体制:専任化 〜500万円規模 条件を満たさなければ、ここで止まる/形を変える 事業検証 MVP・初期販売 / 体制:増員 〜数千万円規模 稟議で承認をもらうのは「総額」ではなく「ルール」 ×「3年で1億円ください」 → ○「①に300万円ください。通過条件はこの3つ。満たしたら②の稟議を持ってきます」 経営層は損失の上限が明確になり、担当者は小さく速く始められる。生成AIの活用で①②のコストは年々下がっている。
一括投資と段階投資の比較。段階投資では①課題検証(〜100万円規模・担当1人+協力者)→②価値検証(〜500万円規模・専任化)→③事業検証(〜数千万円規模・増員)と金額も体制も刻み、各段階の通過条件を満たしたときだけ次の予算が解錠される。

段階投資は人にも適用します。①の段階で専任5人のチームは要りません。担当1人+協力者で始め、②で専任化、③で増員 — 検証の進捗と体制を連動させることで、「大所帯になったから止められない」を構造的に防げます。少人数で始める実務は専任ゼロの体制づくりをご覧ください。

生成AIの活用で①②のコストは年々下がっています。数百万円かかったリサーチとプロトタイプが数十万円で済む今、段階投資の入口はかつてなく低くなっています。

出典:アビームコンサルティング「大企業の新規事業実態調査」(2018・780社)。