新規事業の議論が噛み合わない原因の多くは、話しているフェーズのズレです。0→1(事業の種を見つけて形にする)と1→10(見つかった型を拡大する)は、同じ「新規事業」でも別競技。0→1の正解は1→10の不正解であり、その逆もまた然りです。
反転①体制:少数精鋭 ⇄ 分業
0→1は2〜3人の「全部やる」チームが最速です。分業すると学習が分断されます。1→10では逆で、営業・CS・開発を分業し、再現可能なプロセスに落とすことが成長の条件になります。0→1に大所帯を投入するのも、1→10を少人数の職人芸のままにするのも、どちらも失速の原因です。
反転②人材:探索型 ⇄ 執行型
0→1に必要なのは、正解のない中で仮説検証を回せる探索型人材(担当者の人選基準)。1→10で必要なのは、決まった型を高い精度で回し改善する執行型人材です。0→1の功労者が1→10の適任者とは限らない — この人事の割り切りができる会社は強い。
反転③KPI:学習速度 ⇄ 効率
0→1のKPIは学習速度(仮説の検証数)、1→10のKPIはユニットエコノミクス(CAC、LTV、粗利率)です。切り替え時期を先に経営と合意しておく方法はKPI設計で解説しています。
反転④投資:小さく刻む ⇄ 勝ち筋に張る
0→1の投資は段階的に刻む(段階投資の設計)が原則ですが、PMFが見えた1→10では逆に、出し惜しみが機会損失になります。競合より先に市場を取るための集中投資に切り替える判断が要ります。
大企業780社の調査では、テーマ100に対し立ち上げ45・単年黒字化17・中核事業化4(アビームコンサルティング・2018)。「立ち上げ」から「中核事業」への間、つまり1→10の途中にも大きな脱落があります。
移行のサイン — 「同じ売り方が3回続けて通る」
0→1から1→10への移行タイミングは、感覚ではなく再現性で判断します。目安は同じ顧客像に、同じメッセージで、同じ価格が3回以上連続で通ること(最初の10社のつくり方)。1回の大型受注は再現性の証拠になりません。移行前に拡大投資を始めると、検証不足のまま固定費だけが積み上がります。
出典:アビームコンサルティング「大企業の新規事業実態調査」(2018・780社)。